インタビュー

著名人からのインタビュー

オリーブオイルの愛好家は世界中にいます。様々な分野の方に美味しいだけではない、その人気の理由と使い方を語っていただきます。

【第16回】
さまざまな効能をもつオリーブオイルだからこそ
食材本来がもつパワーをより深く引き出す

『鎌倉薬膳アカデミー』
学院長
山内 正恵さん

四季折々の自然が美しい鎌倉にある「鎌倉薬膳アカデミー」では、一般の方を対象とした通学コースや助産師さん向けの専門コース、腰痛や冷え性などの不調を改善する単発講座まで、楽しみながら毎日の食事に薬膳を手軽に取り入れる方法が学べる学院です。講演会などで忙しく全国を飛び回る学院長の山内先生に、体と心の「調和・バランス・平衡」を整えるきっかけとなるオリーブオイルを使った薬膳料理を教えていただきました。

目的をもって食べ物をいただく。それが薬膳です。

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― 「薬膳」とは、そもそもどういうものなのでしょう?

山内:
薬膳をシンプルに表現するなら「目的をもった食事」です。食事には目的があります。たとえば、「最近、体の調子が悪いから元気になりたい」とか「老化を防止したい」「髪がパサついてきたのでツヤを取り戻したい」「お肌にハリが欲しい」などの日頃気になる不調がありますね。さらに少し深刻になれば「糖尿病を治したい」「もうすぐ手術なのでそれに耐えられる力がほしい」「術後の回復を促進したい」など。これらの症状に対して目的をもった食事をするのが薬膳です。

― 薬膳の根本にあるのが、中国伝統医学ですね。

山内:
そのとおりです。その昔、食べ物も薬も同じひとつのものとして考えられていました。それが「医食同源」です。薬膳は、中国四千年とも五千年ともいわれる歴史の中で培われ、裏打ちされた統合医学です。その長い歴史の中で、自然界にある様々なものを実際に試しながら、人の体にそれらがどのような影響を与えるかを取捨選択してきた結果、薬膳という形で今を生きる私たちに伝えられています。薬膳は先人がつくった宝そのものです。長い歴史を経ても色あせずに残っている理由は、それが本物だからでしょう。六千年の歴史を持つオリーブも同じですね。

― 歴史ある中医学の書物にも、薬膳としてオリーブオイルは記載されているのでしょうか?

山内:
はい。わたしがいま持っている書物にオリーブオイルが載っています。中国は広いですから、地方によってはオリーブが栽培され、オイルとして使用されていたのでしょう。中国でも古くからオリーブオイルを使用していたという証ですね。

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― 薬膳とは、実践と経験から得た「不調や病気を治す方法」なのですね。実際に食事に取り入れるのはハードルが高そうですが、薬膳をどう捉えたらわかりやすいでしょう?

山内:
食事は、たとえば「お腹がすいたな」と、空腹を満たす目的で食べればただの「おかず」でしかありません。でも、「いまの自分にはどうも“元気”が足りていないな」と自分自身の状態をよく見極めたうえで食べれば、それは「薬膳」になります。

― 食べるときに、ちょっと意識を変えるだけで食べ物が薬効に変わるのですね。

山内:
たとえば、疲れたときに食べる肉じゃがは、すごく美味しく感じられるのものですが、栄養学的では、牛肉はタンパク質とビタミンBに分析されます。でも、薬膳では「牛肉は血をつくるもの」。玉ねぎは、栄養学では硫化アリル・カリウム・亜鉛・リン・ビタミンB1・B2・C。でも、薬膳では「玉ねぎは血液を巡らすもの」。薬膳で見るとまったく別の解釈になります。

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― 山内先生が薬膳を始めたきっかけはなんだったのでしょうか?

山内:
父の死や数年にわたる母の看護で、毎日の食事が人間の健康にとってどれほど重要かを身に沁みる体験をしたからです。私自身も40代に入ってから、体調を崩すことが多くなりました。その時、自分の人生についてどう生きるべきかを真剣に考えました。行き着いたのはやはり日々の食事です。食事をただ単に「美味しい食事」ではなく、「体にいい食事」をしたいと考えるようになりました。そして、薬膳と出会った時に「これだ!」と直感したのです。薬膳は、私の人生を変える大きな転機になりました。

― 和食を取り入れた薬膳の普及活動をされていますが、薬膳を生活に取り入れるようになって、山内先生ご自身はどのように変わりましたか?

山内:
いろいろなことが変わりましたが、もっとも変わったのが“気”です。それまで悶々と滞っていた“気”が、一気に巡りはじめたという感じです。薬膳を学んでからは、おかげさまで元気いっぱいです。今は薬膳を世の中に広めることが天職だと感じています。

薬膳として見たオリーブオイルの効用

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― 薬膳ではオリーブオイルもよく使うのでしょうか?

山内:
はい、良く使いますよ。オリーブオイル以外にも料理に応じてごま油やエゴマ油、菜種油なども使用します。薬膳では食材を1つに限定することはしません。なぜなら食材にはそれぞれ違う働きがあるからです。食べることを通じて、食材がもつさまざまな効能を体に取り入れるのが薬膳です。

― 薬膳的にはオリーブオイルはどのような効能があるのでしょうか?

山内:
オリーブの収穫期が秋であるように、オリーブオイルは秋から冬にかけて、乾燥する寒い季節にぴったりの油です。「清肺潤肺(せいはいじゅんぱい)」といって、肺の熱を冷まし、肺を潤す効能があります。具体的な症状としては、喉の腫れや痛み、空咳、気管支炎など。痰を除去して咳を鎮める作用があります。他にも、唇や口の乾きを抑えるので嚥下(えんげ・食べ物などを飲み込み、胃に送ること)の手助けをします。胃酸の分泌を促進するので、食欲不振にも効果があります。二日酔いや魚介類による中毒にも作用します。

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― オリーブオイルには薬膳的にもさまざまな効能があるのですね。驚きました。薬膳の1つとしてオリーブオイルを使う時、何かルールのようなものはありますか?

山内:
薬膳は、食材と食材の組み合わせです。組み合わせのルールが中医学理論に基づいたものであることが重要です。今回のレシピのテーマは「季節の薬膳」なので、「季節のものを入れる」ことと「色を五行学説で分類される秋の色”白”を取り入れること」。組み合わせるなら、なるべく似通った効能のものを合わせるのがポイントです。全然違うものを組み合わせると、それぞれの効果が半減してしまいます。

― オリーブオイルと相性が悪い食材は何かありますか?

山内:
オリーブオイルは栄養学的には、血液サラサラ効果や糖尿病・認知症・がんの予防、免疫力アップ、便秘解消など、さまざまな働きがありますよね。だから「オリーブオイルのようにいろいろな効能があるものはどんな食材にも合う」と考えて問題ありません。むしろ、それぞれの食材がもっている効能や特性などを一層引き出す相乗作用があるように思います。今回はレシピを作るうえで、いろいろ試作してみたのですが、このレンコン餅のタネにオリーブオイルを入れたものと入れてないものを比べると、まったくコクと風味が違うことに驚かされました。オリーブオイルを加えた方は、調和が見事でマイルドな仕上がりになりました。

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― 今回の2品の「季節の薬膳」の効用について教えてください。

山内:
1品目の「オリーブオイル風味レンコン餅」 は、空咳や咽喉の痛みの改善、止血などを目的とした薬膳です。テーマカラーは「白」。レンコンも白、キクラゲも白。白キクラゲを食べるとお肌がものすごく綺麗になるんですよ。レンコンも白キクラゲもどちらも体に潤いを与えてくれるものです。仕上げにレンコン餅の白いベースの上に自然界にあるその他の五彩(青・赤・黄・黒)を散らし、調和させました。青がいんげん、赤がクコの実、黄がかぼちゃ、黒がしいたけとブラックオリーブです。最後にフレッシュなオリーブオイルをかけて完成です。

2品目の「梨とドライいちじくのヨーグルトプリン 」は便秘改善、美肌などを目的とした薬膳です。こちらも白です。この薬膳は肺に作用します。呼吸機能を高めたり、呼吸器を潤してくれる働きがあります。空咳を止める作用がある梨の2/3量をすり下ろしてヨーグルトの中に入れました。

― 長い歴史をもつという点では、薬膳もオリーブオイルも同じですね。

山内:
オリーブには六千年の歴史があるそうですね。オリーブオイルの生産農家さんたちも切磋琢磨しながら、次の世代に繋いでいきたいという熱い思いで作ってこられたから、今もこうして世界中の人に愛されているのでしょう。心を込めて丁寧に作られたオリーブオイルには、必ず“気”がこもっています。

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― 薬膳の考えを普段の食事に取り入れるコツを教えて下さい。

山内:
難しく考えずに「食事に季節の食材を取り入れる」ことでいいのではないでしょうか。でも、いまスーパーには食材があふれかえっていますから、どれが旬なのかわかりにくいですよね。ですから常に旬を意識することが大切です。旬のものをいただくことが“気”(自然や生命のエネルギー)をいただくことですから。

季節の薬膳一品目「オリーブオイル風味レンコン餅 」

空咳や咽喉の痛みの改善、止血などを目的とした薬膳

【材料】(4人分)

レンコン 400g
鶏ひき肉 100g
しいたけ 1個
かぼちゃ 15g
いんげん 2本
白キクラゲ 1g
ブラックオリーブ 2g
クコの実 適量
<調味料>
エキストラバージン・オリーブオイル 大さじ1
少々
(銀あん)
だし汁 200 cc
みりん 5cc
薄口しょうゆ 5cc
少々
水溶き片栗粉 大さじ1

【作り方】

  • レンコンは皮をむき、酢水に漬け、粗目にすりおろす。
  • ①の水気を少しだけ切り、オリーブオイルと塩を加え鶏ひき肉と一緒によく混ぜる。
    (オリーブオイルを加えると出来上がりがまろやかになる)
  • 1個50~60gの小判型に丸めてから、オリーブオイル(分量外) を引いたフライパンで焼く。
  • 野菜は全て小さめに切り、だし汁で柔らかくなるまで煮てから味を付け、 最後に水溶き片栗粉で閉じる。
  • 器に③を盛って上から④をかけ、水で戻したクコの実を乗せる。
季節の薬膳二品目デザート「梨とドライいちじくのヨーグルトプリン」

便秘改善、美肌などを目的とした薬膳

【材料】(4人分)

150g
ヨーグルト 300g
ドライいちじく 2個
クコの実 適量
<調味料>
粉糖 50g
ゼラチン 7g
エキストラバージン・オリーブオイル 適量
赤ワイン 適量

【作り方】

  • 梨は皮をむき、100gをすって残りは5mm角のさいの目切りにする。
  • 小鍋にドライいちじくを入れ、赤ワインと水(分量外)をいちじくがかぶるくらいの量を入れて火にかけ、弱火で15分程煮る。
  • ゼラチンは箱に記載されている分量のお湯に振り入れ、溶かす。
  • ヨーグルトにすった梨、粉糖、③を加えて混ぜ合わせる。
  • 器に④を流し入れ、冷蔵庫で冷やし固めたら4等分に切った②を乗せ、①のさいの目切りにした梨を散らす。最後に水で戻したクコの実をのせ、オリーブオイルを回しかける。

プロフィール

プロフィール

山内 正惠(やまうち・まさえ)さん/鎌倉薬膳アカデミー学院長
平成6年より山内懐石料理教室を主宰(近茶流懐石講師)。その後、鎌倉にてfood-stage皿×皿(家庭料理・薬膳料理教室)を設立。その間、両親の病気を経験。食の重要性を実感し、平成11年から大阪あべの辻料理師専門学校にて日本料理を専攻、同校、日本料理専科カレッジ卒業、また、同校中国料理技術講座コース修了(通信教育)。その後、国立北京中医薬大学日本校にて国際薬膳師・国際中医師の資格を取得し、平成19年、鎌倉薬膳アカデミーを開校。和食を取り入れた薬膳の普及に努める。平成21年8月に株式会社m’s companyを設立し、テレビ、雑誌、講演会、講習会、企業のメニュー開発など幅広く活躍中。著書に『皿×皿流薬膳ごはん』。

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