インタビュー

著名人からのインタビュー

オリーブオイルの愛好家は世界中にいます。様々な分野の方に美味しいだけではない、その人気の理由と使い方を語っていただきます。

【第14回】
オリーブオイルの健康効果とオリーブオイルの表示に関する世界的な動き

香川県産業技術センター発酵食品研究所 主席研究員
柴﨑 博行さん

食品の三つの役割

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― オリーブオイルが健康に良いと広く知られていますが、具体的にどのようにいいのか教えてください。

柴﨑:
食品には大きく、「一次機能(栄養源としての役割)」、「二次機能(美味しいこと)」、「三次機能(健康効果)」の三つの役割があります。バージン・オリーブオイルは、美味しく摂れると同時に様々な健康効果が期待できる油脂(栄養源)であり、これら全ての機能を持っているということが言えます。

オレイン酸はオリーブオイルから発見された

― オリーブオイルの特徴を教えてください。

柴﨑:
大豆、綿実、ごまなど多くの植物油が種子から抽出される種子油であるのに対し、バージン・オリーブオイルは果実(主に果肉)から採られるオイルです。よって、採油の方式も種子油のように溶剤を加えたり、何度も高熱を加えたりなどの方法とは異なり、一般的にはジュースのように、自然の風味そのままに果汁を搾り、遠心分離法によってオイルだけを採るという方法で採油されます。
多くの植物油が採油後に精製された、いわゆるサラダ油であるのに対して、バージン・オリーブオイルは採油後に濾過を行っただけのナチュラルなオイルです。精製工程を経ていないために様々な微量成分を含んでおり、それらの成分がバージン・オリーブオイルの独特の風味や健康効果の基となっています。

― 具体的に私たちの健康に有効な成分とその効能を教えてください。また、特に現代人が知っておきたい成分についても教えてください。

柴﨑:
油脂の基本成分である脂肪酸のうちオリーブオイルの主成分として含まれているのがオレイン酸です。オレイン酸は一価不飽和脂肪酸の一種ですが、その名前はこの脂肪酸がオリーブ(Olea europaea)のオイルから最初に見つけられたことに由来しています。オレイン酸の特徴として、他の不飽和脂肪酸と比べて酸化しにくく、体内では脂質酸化による生活習慣病の発症リスクを低減が期待できると言われています。またオレイン酸の最も知られている健康機能として、HDL(善玉)コレステロールを低下させずにLDL(悪玉)コレステロールのレベルだけを低下させると言われています。また内臓の機能障害や便秘の改善、骨生成の促進などにも効果があると言われています。
食用油脂としてオリーブオイルに特徴的なのがポリフェノールです。オリーブオイルには様々なポリフェノール成分が含まれており、抗酸化性のほか、LDL(悪玉)コレステロールの低減作用があるとの報告があります。
他にも、抗酸化成分として作用するビタミンE(トコフェロール類)やカロテノイドや、血中コレステロール、特にLDL(悪玉)コレステロールの低下作用が知られている植物性ステロールなどもオリーブオイルには含まれています。
また比較的新しい成分としては、2005年に初めて報告されたオレオカンタールがあります。この成分はオリーブオイルの苦味成分ですが、イブプロフェンなどの鎮痛薬成分と同様の抗炎症作用を有することが報告されています。

グラフ①

グラフ②

Interventional study: LDL-C (a), ox-LDL concentration (b),
Triglycerides (c) and HDL-C (d) before and after 2 h of a meal with extra virgin olive oil (EVOO; black line) or corn oil (gray line), *P<0.001, **P<0.05.

F.Violi, et. al., Extra virgin olive oil use is associated with improved post-prandial blood glucose and LDL cholesterol in healthy subjects, Nutrition & Diabetes (2015) 5, e172; doi:10.1038/nutd.2015.23, Published online, 20 July 2015

海外での健康効果を表示する傾向

― オリーブオイルの健康について、世界的な動きはありますか?

柴﨑:
今、各国でオリーブオイルの健康効果を表示する動きが出てきています。
アメリカ食品医薬品局(FDA)は2003年に、「1日当たりの総摂取カロリーを増やさず、主に動物脂肪から摂取している飽和脂肪酸のうち、大さじ2杯をオリーブオイルに置き換えると、オリーブオイルに含まれるオレイン酸の働きで、冠動脈性心疾患のリスクを低減する可能性があります」という内容の『限定的健康強調表示(ヘルスクレーム)』をオリーブオイルに表示することを正式に認可しています。
欧州食品安全機構(EFSA)の2011年の評価により、EU圏内では「オリーブオイルに含まれるポリフェノールがLDLコレステロールを酸化から守るのに役立つ」という健康表示が認められています。

― オリーブオイルの健康的効果を取り入れるために、どのように食べれば良いのでしょうか?

柴﨑:
1950年代に米国の生理学者であったアンセル・キーズ博士を中心とした世界的な疫学研究「世界7カ国共同研究」が行われた結果、地中海地方で伝統的に実践されている食生活スタイルが虚血性心疾患などのリスクを減らすとして、地中海式食事法(地中海式ダイエット)が提唱されました。その後、地中海式ダイエットは、がんや糖尿病のリスク低減にも効果があることが報告されています。この食事法では食材によって摂取する頻度がピラミッド型に定められており、穀類のほか季節の野菜や果物、豆類などを薄味のシンプルな調理法で毎日摂取するのに対し、甘いものや卵、魚類などは週数回、獣肉類は月数回の摂取が理想とされています。そのなかでオリーブオイルは主な脂質源として毎日摂取すべきものと定義づけられています。つまり、オリーブオイルだけを食べることだけが良いのではなく、油脂はオリーブオイルにして、野菜など他の食材と一緒にバランスよく食べることが良いとされているわけです。
また地中海食については低炭水化物食と同様の体重低減効果が認められることが2008年に報告されています。

グラフ③ 地中海型食事のピラミッド

オリーブオイルの効果を十分にいただくためには、バランスの良い食事

― 柴﨑さんがお勧めするオリーブオイルの召し上がり方を教えてください。

柴﨑:
エキストラバージン・オリーブオイルは、ドレッシング類やマリネ、カルパッチョなどに代表されるように、酸味、塩味との相性がとくによい素材です。和食であれば、刺身や冷ややっこを食べる際に醤油とともにエキストラバージン・オリーブオイルをかけると風味が増すのでお勧めです。また夏場であれば、冷麺のたれとして醤油とレモン果汁、そしてエキストラバージン・オリーブオイルをベースに使われるとおいしくいただけると思います。
オリーブオイルに含まれるオレイン酸などは加熱調理してもあまり変質することはありませんが風味成分は揮発してしまいますので、加熱調理でバージン・オリーブオイルの風味を生かすには、加熱時にはオリーブオイルを使用し、火を止めた後にエキストラバージン・オリーブオイルを適量加えるのが良いと思います。
オリーブオイルは油脂ですので、健康に良いからと言って多量に摂取することはカロリー過多などの悪影響が想定されます。日常使用する油脂をオリーブオイルに置き換えるなど、油脂として摂りすぎない程度で使用していただくのが最も効果的だと思われます。

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― より効果を高めるためのオリーブオイルと食材の組み合わせや調理法はありますか?

柴﨑:
15年ほど前の国内食品メーカーと大学(日本女子大学家政学部)の研究成果として、トマトジュースをオリーブオイルと一緒に摂ることで、トマトに含まれるリコピンの体内への吸収が高まることが分かっています。トマトは地中海式ダイエットにおいても多用される食材ですので、この研究成果はその有効性のひとつを示すものと考えられます。
また2014年の報告では、ホウレン草やセロリ、ニンジンなどをオリーブオイルと一緒に摂取することにより血圧を下げるニトロ脂肪酸という成分が形成されることが分かっています。
このように、野菜類を中心として体に良い他の食材と組み合わせていただくのが効果的だと思われます。

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プロフィール

プロフィール

柴﨑博行さん/香川県産業技術センター発酵食品研究所 主席研究員
1968年生まれ。1991年九州大学農学部卒業。同年香川県庁入庁、発酵食品試験場(現産業技術センター発酵食品研究所)に配属。特産品開発担当として、1996年よりオリーブの化学分析、機能性評価、商品開発支援などに従事。全国食品関係試験研究場所長会優良研究・指導業績表彰授賞(2012年度)。香川県パネル(官能評価チーム)メンバー、香川県オリーブオイル品評会審査員。

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