インタビュー

著名人からのインタビュー

オリーブオイルの愛好家は世界中にいます。様々な分野の方に美味しいだけではない、その人気の理由と使い方を語っていただきます。

【第13回】
オリーブオイルに食材を合わせると1+1=2以上の効果。料理に複雑な味わいを与えてくれます。

料理研究家
井上かなえさん

料理研究家、料理ブロガーとして高い人気を誇る井上さん。もともと「献立の記録や母との連絡」のために始めたブログですが、楽しくつづられた家族との日々や、作りやすく、身近な材料でできるレシピが大きな支持を得ています。今回のインタビューでは、オリーブオイルの話を伺うにあたり、Mario Solinas受賞作品のオリーブオイルを3種テイスティングしていただきました。

ひとくちにエキストラバージン・オリーブオイルといっても、いろんな個性がありますね。

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― まずはオリーブオイルのテイスティングをしていただきます。4つのテイスティンググラスに、それぞれエキストラバージン・オリーブオイルを入れています。順に香りと味わいを試してみてください。

井上:
料理教室や店頭で、オリーブオイルの風味を比べて試したことはありますが、本格的なテイスティングは初めてです。こんな風にやるんですね。(最初のオリーブオイルの香りをかいで)草のような香りですね。少し酸味のあるバナナのような、夏の香りという印象です。味わいは、けっこうスパイシー。おいしい!

― これはライプというカテゴリーで1位を獲得したオリーブオイルです。熟したオリーブの実を使っています。

井上:
2番目も試してみますね。こちらは穏やかでまろやか。フレッシュで、トマトのような、いい香りです。(口に含むと)すごくマイルド! 優しいですね。口に含むとまた緑の香りがしてきます。

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― これはマイルドグリーンというカテゴリーで3位を獲得したものです。基本的に、マイルドなタイプはサラダや魚に合わせるといいといわれています。では3番目のものをどうぞ。

井上:
今までのものとは全然違って強い香りですね。刈ったばかりの草という感じでしょうか。野性的です。(口に含むと)本当に草のよう! でも苦みや辛みもたっぷりあって、かなり個性的ですね。肉のような強い食材に合いそうですが、淡白な豆腐にかけてみてもおいしそう。野菜にも、よく合うと思います。

― これは、インテンスグリーンという、一番風味が強いカテゴリーで1位を獲得しました。では、最後のグラスも試してください。

井上:
なにか熟し過ぎたような……。ビニール袋に入れて熟れすぎてしまった梨みたいな香りですね。

― 口に含むのをためらってしまいますよね。これはディフェットといって、欠陥があるタイプです。

井上:
条件がそろわないと、オリーブオイルもこんな風味になってしまうんですね。4つの中では、最初のライプのものが好きですが、料理に合わせてみたいのは3番目のインテンスですね。味の変化がどうなるのか、見てみたいです。相乗効果で料理が別のものに変わるような予感がします。1+1=2以上の広がりのある変化が起こるようなワクワク感があります。例えば私はパクチーが好きなんですが、そういうちょっとくせのある食材にも合わせてみるのも良さそうです。

料理にかけるだけでグレードアップ。食材の良さを引き立て、臭みは消してくれます。

― でき上がった料理に、食卓でオリーブオイルをかけるだけで印象がかなり変わるんですよ。相性のいい組み合わせを試してみましょう。

井上:
和食にもオリーブオイルはよく合いますよね。このオクラとえびのあえものにも、よく合いますね。コクが出ますが、香りのせいか、さわやかな感じがします。

― お刺し身に合わせてみましょうか。普通にしょうゆだけで食べてから、しょうゆにオリーブオイルを足してみてください。

井上:
では、イカから。これは、オリーブオイルをつけるととてもおいしいです。意外にわさびとオリーブオイルの相性もいいですね。どちらも香りと味わいが強いですが、良さを消さないのは不思議です。まぐろには、インテンスのものを合わせてみましたが、赤身の生臭さが消えて食べやすくなりましたね。パンチのあるもの同士が合いますね。
ウニにもトライしてみましょうか。これもインテンスが合うかな。今まで、ウニにオリーブオイルを合わせるなんて考えたこともなかったけど、しょうゆだけで食べるよりも、海の香りを感じます。これもおすすめです。

― 紅たでやねぎなどの薬味の香りは、オリーブオイルに邪魔されないんですね。

井上:
もともとの食材の良さを消すことがありませんね。むしろ、引き立てている印象です。オリーブオイルをプラスすることで、しょうゆの量を減らせるので、減塩効果も期待できそうです。油をとることにはなりますが、オリーブオイルは健康にいいので安心ですね。
白身の魚や貝類は、マイルドなタイプが合いそうです。しょうゆでなくて、塩とレモンにオリーブオイルでもおいしいと思います。刺し身とオリーブオイルといえばカルパッチョと思っていましたが、ウニや生湯葉などカルパッチョに使わない素材でもよく合うのは発見でした。
中とろには、インテンスのタイプで。実は個人的に、まぐろの刺し身は少し鉄分を感じさせるところがあまり好きではなかったんですが、それが食べやすくなりますね。これなら、まぐろやかつおの刺し身も好きになりそうです。

― インテンスタイプのオリーブオイルは、少しくせのある食材によく合うようですね。

井上:
良いところを残して、臭みをマスキングしてくれるのかもしれませんね。例えば、なめろうにも合うと思いますね。ちょっと臭みがあって苦手だという方も多いと思いますが、オリーブオイルを使うと、きっと食べやすくなると思います。

― 食卓で料理にかけるだけですが、新鮮な味わいに変わりますね。

井上:
料理をおいしくすることに関しては、オリーブオイルに含まれる苦味や辛みが大切な気がします。この自然な苦味や辛みが、料理の味わいを複雑にして、おいしさにつなげているんでしょうね。食材本来のうまみや甘みを、後ろから引き立てているから、味わい深くなるんだと思います。

オリーブオイルは、体にいいので、安心して使えますね。

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やはり健康面を考えてオリーブオイルを選ぶということもあるんでしょうか。

井上:
そうですね。何年か前までは炒め物にはサラダ油を使っていたんですが、今はオリーブオイルを使うようにしています。口に入れるものなので、何でできているか分かっているもののほうが安心できると思って。オリーブオイルは、悪玉コレステロールを下げ、善玉コレステロールをキープすると聞いたことがあり、健康面でもいいなと思っています。えごま油やココナッツオイルも体にいいらしいのですが、香りが独特なので料理を選ぶんですよね。

― 気に入っているオリーブオイルの使い方を教えていただけますか。

井上:
バゲットにつけて食べるのも好きですが、生野菜にかけることが多いですね。最近、気に入っているのは、泉州の水なすに合わせること。生で食べられるので、そのまま切ってオリーブオイルと塩だけでいただくのがおいしいんですよ。トマトとバジルも合わせて、しょっちゅう食べています。
お酒のつまみとして好評なのが、豆腐のオリーブオイル漬け。水きりした豆腐をオリーブオイル、酢、塩のマリネ液に一晩漬けるだけですが、豆腐があっさりしたチーズのようになります。トマトのスライスを散らしてもいいですよ。
蒸しなすを電子レンジでサッと作ることがありますが、ごま油バージョンとオリーブオイルバージョンでと気分で使い分けています。どちらもご飯のおかずとしてよく合います。

― お気に入りのオリーブオイルはありますか。

井上:
個人的には草の香りがするオリーブオイルが好きです。買ってきたら、必ず味見をするので、気に入ったらそのブランドを買うようにしています。「香りフェチ」なので、オリーブオイルも香りを大事にしたいですね。
オリーブオイルに限った話ではありませんが、家庭料理でも、もう少し香りを大事にしてもらえるといいなと思います。煮物などのしょうゆは火を止めてから加えるだけで、香りが飛びませんし、柑橘類や香味野菜もあるとないのとでは、まるで違います。香りについては、ほんのちょっと工夫すれば、いつもの料理のグレードが上がります。そういう意味では、オリーブオイルの香りにも、もっと注目してほしいですね。

※今回のインタビューで、オリーブオイルのテイスティング指導は、オリーブオイル・コンサルタントの根本千代子さんに行ってもらいました。

プロフィール

プロフィール

井上かなえさん/料理研究家
毎日の晩ごはんと子どもたちとの日常を描いたブログ「母ちゃんちの晩御飯とどたばた日記」を2005年にスタート。今では、1日12万アクセスを超える人気ブログに成長させた。ブログのレシピを書籍化した最新刊「てんきち母ちゃんの 朝10分、あるものだけで ほめられ弁当」(文藝春秋)など、13冊の著書がある。雑誌やテレビ、食品メーカーのレシピ考案、料理教室の講師としても活躍している。

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