インタビュー

著名人からのインタビュー

オリーブオイルの愛好家は世界中にいます。様々な分野の方に美味しいだけではない、その人気の理由と使い方を語っていただきます。

【第10回】
オリーブオイルには、日本料理を発展させる可能性を感じます。

近茶流・柳原料理教室副主宰
柳原尚之さん

江戸懐石近茶流・柳原料理教室副主宰を務める柳原さん。東京農業大学で発酵学を学んだのち、小豆島の醤油会社に勤務。オランダの帆船スワンファンマッカム号唯一のアジア人のキッチンクルーとして世界を巡った経験もお持ちです。FABEX2016では、インターナショナル・オリーブ・カウンシルのブースでオリーブオイルと和食のセミナーの講師も務めました。

オリーブの島、小豆島でオリーブオイルと出会いました。

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― 日本有数のオリーブの生産地でもある小豆島でお仕事をされていたそうですが、どんな島なのでしょうか?

柳原:
大学卒業後、醤油会社の研究員として7か月ほど滞在しました。暖かくて、すごしやすかったのが印象的でした。気候だけではなくて、家に鍵をかけなくてもいいというくらい穏やかな土地柄なんですよ。住んでいるのも、いい人ばかりです(笑)。オリーブの木は、家の敷地内にも植えられていましたし、いろんなところで、毎日のように見かけました。このときに小豆島オリーブ公園で、オリーブの栽培や品種、オリーブオイルの種類について、ひととおり勉強し、生産者の方々から直接話を聞く機会もありました。

― なぜ小豆島にオリーブの栽培が定着したのでしょう?

柳原:
100年ほど前、明治時代に日本の何か所かで栽培を始めたそうですが、定着したのは小豆島だけ。気温や降雨量など気候の条件が合っていただけでなく、台風や害虫の問題などを小豆島の人々が粘り強く解決してオリーブのための環境を作り、栽培が成功したそうです。また、小豆島では、オリーブを摘んだらすぐに絞っているのもオリーブオイルの品質に貢献していると聞きました。私が小豆島を離れてから、この10年の間にもオリーブオイルの生産量は増え続けているようですよ。
面白いことに、小豆島はごま油でも有名なんですよ。ですから地元の方々は、油の扱い、取り入れ方をよく知っているんです。しょうゆの産地でもあるので、しょうゆのもろみ絞りやごまを絞る知識や手の技がオリーブオイル作りにも生かされているんじゃないでしょうか。

オリーブオイルと日本料理の上手な付き合い方。

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― 先日のイベントでは、くせのある食材には、風味の強いオリーブオイルを合わせておられましたが、日本料理でオリーブオイルをどう使えばいいのでしょうか?

柳原:
ごま油の使い方と同じように考えてみてください。焙煎が強く、香りもしっかりしたごま油は、くせのある食材を合わせると、気になる風味を消してくれます。香りが優しいタイプは、素材の持ち味を活かします。オリーブオイルも同様です。たとえば、あさりのように、貝特有の匂いが少し気になる食材は、もともと酒で臭みを消すことが多いのです。しっかりした香りのオリーブオイルを合わせると、その匂いがふっと消えます。
ただし、日本料理全般には、苦味が少ない、穏やかなタイプが向くでしょうね。そのほうが、素材の風味を大切にできます。日本人はバージン・オリーブオイルが大好きですが、香りが穏やかなものが多いオリーブオイルにも注目して欲しいですね。いくつかのタイプをそろえて使い分けられるといいと思いますよ。

― ほかにも日本料理でおいしくオリーブオイルを使うアイデアはありますか?

柳原:
下ごしらえのひとつに「油塩」という技法があります。塩をした後に油につけ、その後に焼く方法です。こうすることで、さっぱりした甘鯛や舌平目など、少し味わいの弱い魚や、クセのある貝などがクセをなくし、おいしくなります。昔からごま油でやっていた技法ですが、オリーブオイルでもおいしくできます。これはおすすめの方法です。
 もうひとつは天ぷら。油切れがよくてカラリと揚がり、油の持ちもいいんですよ。 私たちは油が「疲れてくる」と表現しますが、続けて揚げているうちにだんだん油の温度が上がらなくなり、カラッと揚がらなくなります。ところが、オリーブオイルは「疲れにくい」。クセの少ない、リーズナブルなオリーブオイルで試してみてください。

― オリーブオイルに合う和の食材を教えていただけますか?

柳原:
特にしょうゆとはとても相性がいいですね。日本料理には「出会いもの」という考え方があります。同じ旬のものや、同じ産地のものは、相性が良いということです。小豆島は昔からのしょうゆの産地で、オリーブの栽培にも適しています。オリーブは海外から持ってきたものではありますが、小豆島の気候が合って根付いているので、その環境が似ているという事なのでしょう。

日本料理にもコクが求められる時代です。

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― 日本料理では油を使わない印象がありますが、日本料理と油についてお伺いできますか?

柳原:
洋食などの影響で油をよく使い、肉も食べるようになり、料理に「コク」が求められるようになりました。日本料理でも適量の油を少しずつ取り入れて、嗜好の変化に対応していくのは大事なことでしょうね。

― 日本料理に合う油は、どう選べばいいのでしょう?

柳原:
これからの新しい日本料理にとって、油との付き合いは欠かせないものです。ただし、いろいろな油がある中で、どれを選択するかという問題があります。オリーブオイルは、生で食べてもおいしいというのが大きな強みです。個人的には、加熱せずに使う場合は、サラダ油やごま油でなく、オリーブオイルを使っています。また、オリーブオイルは、健康にいいというのもメリットのひとつです。えごま油やココナッツオイルなど、いろいろな油がありますが、オリーブオイルの場合、紀元前からずっと長く、広い地域で使われていますよね。私はその点を信頼して、オリーブオイルを選んでいます。
今後、多様なオリーブオイルを使いこなせるようになれば、日本料理の世界も広がると思います。日本独自の使い方が発見できればいいですよね。

オリーブオイルと和食セミナーでのレシピ

【スモークサーモンのオリーブ山葵和え】
スモークサーモンやかまぼこ、直火で焼いたせりとむかご、ケイパーをオリーブオイル、わさび、しょうゆで和えます。わさびの辛みがオリーブオイルによく合います。せりなど、香りのある食材を生かすために、穏やかな風味のオリーブオイルを使います。

【アサリのオリーブオイル玉締め】
アサリをオリーブオイルで炒め、しょうゆで下味をつけた後、片栗粉でとろみをつけた煮汁にアサリ、わけぎを入れ溶き卵を加えてふわふわにかため、温かいご飯にのせて最後にオリーブオイルをかけます。独特のクセがあるアサリには、風味が強めのオリーブオイルがよく合います。

プロフィール

プロフィール

柳原尚之さん/近茶流・柳原料理教室副主宰
近茶流・柳原料理教室副主宰。近茶流宗家、柳原一成氏とともに、東京・赤坂にある料理教室で日本料理や茶懐石研究指導にあたっている。NHK「きょうの料理」の講師を務めるほか、テレビドラマや時代劇の料理指導、料理時代考証も行っている。2015年には文化庁文化交流使に任命され、約3か月、海外で日本料理を広める活動を行う。また、子どもを対象とした料理の講義や出版を通じて、食育や江戸時代の食文化の研究や継承もライフワークとしている。近著に『和食を作ろう。』全3巻(教育画劇)、『江戸から伝わる味をたずねて』(池田書店)など。

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